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【Jブンガク】『舞姫』森鴎外<英語版>

09/04/23 Jブンガク より
『舞姫』森鴎外

 「まことの我は,やうやう表にあらはれて,きのふまでの我ならぬ我を攻むるに似たり」


 こんにちは。ロバート・キャンベルです。森鴎外の『舞姫』は日本で最も人気がある作品の一つです。
 ほとんどの国語教科書に載っていて,あらゆる世代の日本人が読んでいます。数ヶ国語にも翻訳されているので,海外でも読んだことがある人はたくさんいるでしょう。
 海外で暮らした日本人があるジレンマを通して,自分の本質に目覚めるという物語です。


     *     *     *


 1890年に出版された「舞姫」。作者は森鴎外。
 これは,鴎外自身がドイツへ留学したときの体験をモデルに書かれた作品。
 公人としてドイツへ派遣されエリートコースを歩んでいた豊太郎。ある日,貧しい踊り子・エリスと出会い,恋に落ちてしまう。
 しかしこの恋ゆえに,豊太郎は職を失ってしまう。
 ある日,友人・相澤の勧めから,彼は帰国のチャンスを得る。出世か,それともエリスとの愛か……。彼は思い悩んだ末,ついに帰国を決断する。
 しかし,エリスはショックで錯乱状態になってしまう。実は彼の子を身ごもっていたのだ。エリートコースと自由な生活との狭間で引き裂かれたい悲恋の物語である。


     *     *     *


 出世の道を選ぶか,愛を選ぶか,主人公豊太郎のジレンマは永遠のテーマであります。現代も多くの読者が共感できる悩みでしょう。両方を選ぶことはできず,結果的に彼女を傷つけてしまいます。意図的ではないにしろ,彼の決断によって,彼女は心にも人生にも大きな痛手を受けてしまいました。
 この作品は,帰国途中の豊太郎が船室で物語をつづり始めるところから始まります。一人きりの夜,豊太郎は,自分が犯した過ちやその痛みをふり返りつつ書き始めます。すると書くプロセスを通して,新しい自分が現れてくるのを感じます。ヨーロッパからの帰路,この書くという過程を経て初めて自分を知ります。自分の過ちを認識できたことが豊太郎の救いです。
 子供時代や省庁での仕事を振り返ったとき,彼はこのように表現します。
「母は私を生きた辞書にしようとし,長官は私を生きた法律にしようとした。」
 このように自分の境遇を周りの人のせいにしますが,恋に落ち,悲惨な別れを経験した結果,真の自我に目覚めるのです。帰国してから何をするか,はっきりとはわからない。だが何をするにしろ全てが自分の意思によって決まることに気付きます。自分で物事を決断し,道を開いていく,当時は非常に新鮮な感覚でありましたが,森鴎外のような明治のエリート青年世代には,共通して見られる問題でした。


一刀両断
「~は忍ぶべからず」


 豊太郎は不利な立場にいるのです。プロシアの首都をさまよい歩く独身の東洋人。差別にあうことも多かったと思います。
 ですが,彼は若く貧しい踊り子エリスと恋に落ち,アジア人の男性として自己を確立していくのです。
 彼女は社会的に弱い立場にありますが,豊太郎は彼女を守り導いていきます。豊太郎はエリスの上に立つことで,徐々に自分のアイデンティティーを築きます。当時の読者を非常に触発し,また衝撃的でもあったと言えるでしょう。

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