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【Jブンガク】『万の文反古』井原西鶴<英語版>

09/05/06 Jブンガク より
『万の文反古』井原西鶴

 「なじみの男としては外になし」

 今回は浮世草子作品をご紹介します。
 17世紀末期大阪商人階級育ちの俳人である井原西鶴の短編集です。
 本作の中心となるエピソードである遊女がなじみ客に手紙を書きます。一般的なラブレターとは違いますよ。


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 1696年に出版された『万の文反古』(よろずのふみほうぐ)。作者は井原西鶴。
 江戸初期に流行した浮世草子の第一人者である。この本は,紙くずの山から出てきた書き損じの手紙という設定の書簡体小説だ。
 その一つが「御恨みを伝へまいらせ候」。遊女・白雲(しらくも)が馴染みの客に出した手紙だ。白雲は他の客は仕事であって,あくまでも七二(しちに)が本命であると訴える。
 私にだって女の意地がある。事によっては死ぬ覚悟……。
 本来,かりそめの愛に生きる遊女が命まで持ち出して真の愛を訴え客を引き止める。
 西鶴はそのたくましさを「白雲」の恨みに乗せて描きだした。


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 私は,この作品のコンセプトを非常に気に入っています。西鶴がゴミ箱から出てきた書き損じの手紙をつまみ出し,その手紙の断片を様々な話にアレンジしたという設定になっています。
 白雲が客に綴る手紙も古紙として回収される前にゴミ箱から取りだしたものです。手紙の冒頭などは見つからないため,いきなり彼女の情熱的な訴えから始まり,読者は状況をなかなか掴めません。
 白雲は傷つき,恨み,心を痛め,手紙を書きながら手が震えるなど激しい情熱に苦しんでいます。その情熱はなじみ客が心変わりしてしまう恐れから来るもの。二人の間に距離ができてしまったことを察知したのです。
 教養がある上品な遊女にはお客様にたくさんの手紙を書くことは欠かせない。なじみ客を引き留めておくために,自分の所に通い続けるように,客を逃すまいという彼女の猛烈な必死さが話を盛り上げています。西鶴の作品にはよく見られる特徴です。西鶴の周りの人々の様々な事情が見えてきます。お金や生死にかかわる問題などメロドラマ的な出来事を,西鶴は手紙の断片を貼り合わせることによって探っていきます。非常に巧みなアイデアをとても面白く軽快に描いています。


一刀両断
「それは御気づまりにて……」


 手紙は全て西鶴が作り上げたものですが,実は当時の流行が反映されています。ここにある本は江戸時代末期に出版された恋文を書きたい若者のための手引きです。12例くらいあります。
 例えば,男性が好きになった女の子宛に書く手紙,そして彼女の返事,一晩をともに過ごした男性に翌朝女性が送る手紙,若い男性が美しい寡婦に宛てて書く手紙など,様々な状況に対応した良い恋文の書き方を指導する本です。
 本自体がまるで手書きであるかのように印刷されています。習字のお手本にもなるんですね。
 さらにお付き合い中どう振る舞うべきかを説明するイラストもあります。例えば,三味線が上手な人はあまり長く弾くべきではない。相手が聞き飽きる前に披露はやめた方がよいなど,19世紀半ばの日本の恋人たちにとって,欠かせないアドバイスが詰まっています。

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