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【Jブンガク】『ぼくは勉強ができない』山田詠美<英語版>

09/04/10 Jブンガク より
『ぼくは勉強ができない』山田詠美

「私勉強しか取り得のない男の人って,やっぱ苦手みたい。つまんないんだもん。」

 こんにちは。ロバート・キャンベルです。
 今日はこちらの新しい本,山田詠美の『ぼくは勉強ができない』を見ていきましょう。
 著者は海外でも,エイミー・山田として知られる人気作家です。
 主人公は青春時代を無傷で過ごしたいと願い,学校に行ってるけど勉強は嫌い。セックスとサッカー以外に興味なし。そんな若者を描いた物語です。
 非常に鮮やかで感動的な本書を皆さんに紹介したいと思います。


     *     *     *


 1992年に出版された「ぼくは勉強ができない」。作者は山田詠美。恋愛を題材にした作品は,海外でも数多く翻訳されている。
 主人公はサッカーが大好きな時田秀美,17歳。勉強はできないが女性にはもてる。ショットバーで働く年上の桃子さんと熱愛中だ。
 けれど,大学に行くことしか頭にない優等生,脇山とはどうもしっくりこない。
 そこで秀美は親友の真理に協力を依頼。真理は脇山を翻弄するため恋愛ゲームをしかけるのだが……。その結果とは?
 勉強,恋愛,友情。高校生が抱える様々な問題。そんな中で,常に自分の価値観や納得できるものをみつけたいと葛藤する秀美。
 世間のフツウを斬新な感覚で捉えた青春小説だ。


     *     *     *


 主人公の秀美は学校で一番人気の高校生。勉強はあまりできないがかっこいいしサッカーも上手い。女子にもモテモテです。
 しかし,彼の面白いところは一人になると常に内省しているのです。
 自分の価値観についてや,自分にとって何が大切なのか……。
 実は複雑な人間で,父親がいない家庭に育ち,子どもの頃からそのことに対してコンプレックスを持っていました。そのため大人の価値観をくつがえし,否定的な性格の持ち主になります。
 「僕は勉強ができない」と言うが,これは負けを認めたわけではなく,勉強以外の分野で自分を表現することに長けているという意味を含んでいるのです。
 この複雑な性格が主人公の魅力を際立たせています。


一刀両断
「ぼうは,それにうつつを抜かして来て勉強しなかった。」


 脇山には立場がありません。学級委員の選挙では秀美に勝ちますが,それも成績がよいからという理由で秀美にとっては,そんなことは何の意味もありません。
 その後,秀美は脇山に報復します。ガールフレンドの真理に脇山を誘惑させ,試験の直前に脇山に対してこう言わせます。
「私勉強しか取り得のない男の人って,やっぱ苦手みたい。つまんないんだもん。」
 そう言われた脇山は落ち込み,成績を落としてしまいますが,この出来事はその後の話に繋がっていきます。
 脇山は上にいるべき存在として,物語の重要な登場人物です。優秀な生徒として上にいるべき者が秀美によって転落させられてしまう。脇山が一番弱っているところに秀美はこう追い討ちをかけます。
「脇山,恋って知っているか。勉強よかずっと楽しいんだぜ。ぼくは,それにうつつを抜かして勉強しなかった。」
 脇山にとってはあまりに残酷な言葉です。彼のような脇役の面白いところは,物語の「強者」の移り変わりが見てとれることです。自分のやりたいことがはっきりしている者が強者とされている物語の始まりから何かをしたいのだけれど,それは学校では見つけられない……。
 学校ではない別の世界にそれを見出そうとするヒーローへと物語は移り変わります。

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