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【Jブンガク】『受験生の手記』久米正雄<英語版>

09/04/09 Jブンガク より
『受験生の手記』久米正雄

 「俺か俺のはデスペレートな勇氣さ」

 『受験生の手記』は,100年ほど前の本ですが,今でもつい昨日書かれたかのように読めます。
 近年,人口は減ってきていますが,志望大学に入るための長く厳しい道のりは変わりません。
 本書はそのような境遇にある若者についての物語です。


     *     *     *


 作者は,久米正雄。この物語は大正時代の学生の手記という形で綴られている。
 主人公健吉は東北から上京し,難関・一高を目指して親戚の元で浪人生活を送る。
 しかし,焦るばかりでまったく勉強に身が入らない。さらに下宿先に遊びにくる澄子に恋をしてしまう。
 その上一つ年下の弟も一高受験のため東京へやってくる。
 ただひたすら勉強する弟。焦りと後悔を繰り返す兄,健吉。
 試験の結果は弟が合格。健吉はまたも落ちてしまった。さらに澄子が弟に好意を寄せていたことを知る。
 健吉は絶望の中,湖へ。その短い生涯を終えるのである。


     *     *     *


 健吉は物事を先のばしにする癖のある男で細かく描写された勉強がはかどらない様は読み手を彼の世界に引き込み同情を買います。やがて健吉の優秀な弟も上京し,二度目の兄と共に受験勉強に励むが,兄が3時間もかけて解いた数学の問題を秀才な弟は5分で解いてしまいます。
 そんなことをされれば,誰でも落ち込みますが,自分は勉強しているんだと言い聞かせ,健吉はのらりくらりと受験日を待ちます。
 そんな中,健吉は澄子という女性に恋をします。ですが,物語の後半で彼女は弟に取られてしまい,健吉は絶望の渦の中におちてゆきます。
 本書は悲劇の結末へと向かう,ある学生の受験地獄を描いた物語です。

一刀両断  For better or worse 「よかれ悪しかれ」

 本書は悲劇の結末へと向かう,ある学生の受験地獄を描いた物語です。
 健吉は最後の試験が始まる直前にそう自分につぶやきます。志望大学に合格するために長い間準備をしてきた最後の力を振り絞る瞬間です。これが最後だと思うとあきらめがつき,試験が始まる前から開放感に気持ちが浮き立ちます。
 大正時代と聞くと,ロマンス,デモクラシー,個人の自由などのイメージが浮かびますが,官僚機構・教育・軍隊などのイデオロギーやシステムが確立され,広がったのもこの頃でした。教育の面で言えば,入学試験に合格することが一番重要とされた時期でした。
 毎年国中の若者たちが数少ないエリート大学に入ろうと入学試験の渋滞が出来たものです。
 現代の私たちにも通じることがあります。100年も前に書かれたのが信じがたいですね。
 今の日本の現状を表しているようで,私のお勧めの一冊です。

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