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恩ちゃんの思い出

 ワイン会に参加していると,常連さんと親しくなる。顔を合わせると「どうも,どうも。」と言いながら,あれこれ話したりもする。
 その中で,某ビールメーカーの営業の恩ちゃんという人がいました。
 彼は,このワインバー周辺のエリア担当ということもあり,ことある度にワインバーに出没した。酒を飲みながら,店の人と話し,いろいろと営業活動している。時たま,グデングデンに酔っ払い,自らのことを「恩ちゃん,酔っ払っちゃった。」と言いながら,ヘベレケになりながら,店の人にタクシーへとかつぎ込まれることもあったそうだ。

 その彼,ワイン会に誘われると,機会の許す限り出席した。
 出席するだけならまだしも,来る度にお土産を持ってくるのだ。
「これは,ウチが今度出す新製品なんです。」
 と言いながら,焼酎やリキュールを毎回のように持参してきた。

 2004年の11月のワイン会,恩ちゃんは,350ml缶を1ケース持ってきた。ケースを開封すると見慣れない商品を取り出した。ラベルが金色。何か?
「今度,出す新製品なんですよ。あとで飲みましょう。冷やしておいてくれませんか?」
と言いながら,ワインバーの店員に,冷蔵庫に入れてもらえるよう頼んでいた。

 ワイン会は盛会。終盤に差し掛かったとき,
「あの新製品出しましょう。」
恩ちゃんは,少し出来上がった雰囲気。おぼつかない足取りで冷蔵庫に向かう。
「あぁ,私やりますから。」店員が冷蔵庫から先ほどの新製品を取り出す。
見慣れぬ缶を,恩ちゃんは真っ先に私に差し出した。
「これ,来年の2月に出す,新製品なんですよ。」
私は,「へぇ~。」と言いながら,早速飲んだ。たしかに美味しい。今までのシリーズは,どうしてもこの会社の看板商品の味がかすかに残り,(どれ飲んでもあの味じゃん。)的なイメージを持っていた。
しかし,この商品は違う。この商品独特の味を持っている。
「この新製品,社員以外で飲むのは,世の中であなたが最初ですよ。」
と心憎いことを言ってくれた。私は,「いやぁ,美味しいっすよ。」と答えた。

 その日も,恩ちゃん,いつものとおり出来上がってしまった。無事に帰宅はしたらしい。

 しばらくして,人事異動で,別のエリアへ移動してしまった恩ちゃん。あのとき以来,会っていないんじゃないかな?今ごろどうしているだろうか?
 酒屋へ行って「今日は泡が飲みたいなぁ。何にしようかなぁ?」と迷ったとき,私はあの時の商品を選んでしまう。冷蔵庫で冷えている金色のラベルは,「恩ちゃん,酔っ払っちゃった。」と私を手招いているように見える。ラベルを見る度,彼を思い出す。

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